• 近藤家
  • たたら跡

 

 中世には赤目系砂鉄(褐色がった銑鉄生産に適する)を使用して銑鉄をつくり、鍛打 により鍬・鎌などを造ったと推定されているが、また真砂砂鉄(黒色で鋼生産に適する)を選び、刀剣などの刃物を鍛造している。特に刀剣の原料として有名な ものは、建長年代に印賀の阿太上山で古都文次郎信賢が造った印賀鋼が鋼の王とした、当時の鍛冶屋に重んじられたことがその頃の本に載せられている。この印 賀鋼は江戸期の大阪鉄市場でも、根雨の鉄山師手嶋伊兵衛(松田屋)の手によって特に高価で売り出されていたことが近藤家文書に記されている。この印賀鋼は 磁鉄鉱系の真砂砂鉄から製錬された鋼である。


  中世には日本刀の工匠として名高い会見郡出身の大原安網が現われている。安網は、これまでの直刀から反りをつけた現在の日本刀の創始者であるが『太平記』 には、源氏の宝刀「鬼切」(国宝)に作刀したことが記され、また安網の子真守が平家の名刀「抜丸山」(重文)の作者であるとしている。


 

 


この章の記事は、下記の方々ににご協力いただき作成しました。

たたら研究会員・郷土史研究家 影山 猛 氏

日南町では、阿毘縁菅沢線拡幅工事中に発見された5世紀初頭とみられる印賀6号墳の中から、27センチメートルの直刀が発見されたが分析の結果、原料鉄は外国産と判明した。一般に日野町の横穴墓などの古墳から古代の鉄製品が出土することが多い。


 

 西伯郡伯耆町では、国道181号線岸本バイパスの道路改良工事が計画され、平成 19年度には埋蔵文化財の発掘調査が実施された。そのうち特に伯耆町や坂長の第6遺跡からは、鍛冶工房遺跡から大量の鉄製品、鉄滓などが出土したが、この 遺跡は古代の会見郡営の官営工房であった可能性が高まった。


 

 平安時代の伯耆国鉄生産は9世紀に調として鉄鋌(てつてい)・鍬を出し、庸として鍬を中央に差し出した記録が延喜式にある。また1073年から20年間に東大寺封物として4340鋌 もの鉄を全国の中で伯耆国のみ差し出していることが平安遺文にあることは、平安時代伯耆国は一大製鉄地であったことが窺われる。このことは、国道9号線の バイパス建設工事に伴う発掘で、大山北東部の東伯耆で22か所もの農具など生産する鍛冶遺跡が発見されたことも関連があると考えられる。


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たたら研究会員・郷土史研究家 影山 猛 氏

  • 鑪(たたら)・鈩(たたら)
    たたら製鉄を行う工場(高殿:たかどの)、または、たた ら製鉄を操業する区域
     
  • たたら製鉄 
    原料の砂鉄・鉄鉱石を鞴(ふいご)で風を送り、木炭の燃焼によって還元(製錬)し、鉄や鋼などを得る製鉄法
     
  • 金屋子神(かなやごしん)
    製鉄・鍛冶・鋳物などを業とする人々が、祀る神 

  • 玉鋼(たまはがね)
    砂鉄を原料とし、たたら製鉄により造られる鋼で、通称名

  • 印賀鋼(いんがはがね、いんがこう)
    玉鋼の商品名、日南町の山ノ上地域で造られていた玉鋼

  • 数多い金属元素のうちで最も多く用いられている元素

  • 鋼(はがね)
    鉄に炭素が重量比で0.04~2.1%(工業上)混ざった合金で焼きが入るため、刃物の材料などになる。

  • 銑鉄(せんてつ)
    鉄に炭素が重量比2.1%~6.7%(工業上)あり、硬くて脆く鍛錬で きないため、鋳物の材料となる。

  • 銑(ずく)
    銑鉄のこと

  • 和鉄・和鐵(わてつ)
    たたら製鉄で造られた鉄

  • 和鋼(わこう)
    たたら製鉄で造られた鋼

  • 和銑(わずく)
    たたら製鉄で造られた銑鉄

  • けら(けら)
    たたら製鉄で造られた鉄・鋼・銑鉄の塊(かたまり)

  • 砂鉄(さてつ)
    たたら製鉄の原料。種類によって真砂砂鉄(まささてつ)、赤目さて つ(あこめさてつ)に分けられる。 

  • 炉(ろ)
    たたら製鉄で使用される製鉄炉。主に粘土・真砂土(まさつち)造られるが、角炉・丸炉は耐火煉瓦(内部)で造られた。
  • 小鉄・粉鉄(こがね)
    砂鉄のこと

  • 木炭(もくたん)
    木の炭

  • 村下(むらげ):たたら製鉄の技師長
    たたら製鉄の技師長

  • カナクソ
    製鉄・精錬時にでる不純物。鉄滓(てっさい)、ノロともいう。


 【たたら用語集】 : 日南町たたら研究会代表 山本 裕二 氏のご協力により構成されています。

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